はじめに
外資系の広告代理店でグローバル企業の広告活用のサポートを行ってみたいという方もいらっしゃることでしょう。広告代理店と言っても、実は各企業によって行う業務が異なります。
各社がどのようなサポートを行っている方を「現在、外資系広告代理店で勤務している私」が解説致します。今回の記事では、具体的に各企業についても、実施業務などをまとめました。
すべての企業ではないですが、実際に対象企業で勤務していた方にご意見も聞きながら記載しているので、内容としては有益な情報となっているかと思います。
外資系総合代理店のスコープ
外資系広告代理店と一概に言っても各社メインで行っている業務が異なります。外資系広告代理店がすべて同じ業務を行っているかということそうではありません。(勿論、被っている業務もありますが)
さて、図1にどのような業務が存在するか纏めてみました。ご自身がどのような業務を行いたく、転職活用するか決める必要があります。広告業界に属している方はご存知ですが、他業種から広告業界に転職を希望されている方は、ここを理解していないと、求めている業種ではない企業にapplyしてしまうかもしれません。
外資系広告代理店の業種は大きく4つに分かれています。
※図1 外資系広告代理店の役割
戦略コンサル
- マーケティング目標(売上、利益)
- 予算設定・配分
- 対象カテゴリー(自社・競合)
- 商品特性・コンセプト・商品ターゲット
- 地域戦略・流通・販促戦略
- 季節性・購買サイクル
- Paid / Owned / Earned戦略
コミュケーション エージェンシー
- ブランド・製品認知目標(純粋想起、助成想起)
- 製品のイメージ目標(好意度など)
- 購入意向目標
- 購入後の感想・評判目標(満足度)
メディアプランニング エージェンシー
- 媒体戦略
- ターゲットをもとにしたメディア選定
- エリア・投下量・実施時期設定
→上記決定の上、媒体買い付け
クリエイティブ エージェンシー
- コンテンツ
- クリエイティブイメージ
- メッセージング
- 出演者のアサイン
広告代理店の世界ランキング
こちらのトピックで広告代理店の世界ランキングについてまとめてみました。日本の広告代理店と言えば、電通・博報堂・ADKが有名で誰もが知っている企業でしょう。また、デジタル専業の広告代理店も多く存在し、サイバーエージェント・オプト・セプテーニなどプレイヤーは多く存在します。
一方、外資系広告代理店については、あまり知られていないというのが、外資系広告代理店に勤務している私から見て感じ部分があります。
世界の広告市場においては、日本最大級である電通でさえも5位となっており、世界にはさらに大きな金額を動かしている企業が存在します。勿論、それらに企業は日本市場への事業展開も行っているので、外資系広告代理店に転職希望をお持ちの方も転職は可能です。
では、広告代理店の世界ランキングについてですが、以下がランキングになります。ビジネス ITさんのデータを参照させて頂きました。
1-4位まで外資系の各企業の解説をまとめみました。
1位:WPPグループ(イギリス)
WPPグループはイギリスのロンドンに本拠地を置く世界第1位の広告代理店です。世界100ヶ国以上に進出し、グループ全体で162,000人程の従業員がいると言われています。
ここまで大きくなっているのも、様々な企業を買収し、大きくなっていると言われています。実際に、1987年にJWT(現Wunderman Thompson Tokyo)を5億6600万ドルで買収、1989年にはオグルヴィ・アンド・メイザー・ワールドワイドを買収しています。
日本での事業展開している主な企業は以下になります。
- グループエム・ジャパン
- Wunderman Thompson Tokyo
- オグルヴィ・アンド・メイザー・ジャパン
- GREY group
- カンター ジャパン
などなど、他にも存在します。
企業サイト:https://www.wpp.com/contacts#tab-companies
2位:オムニコムグループ(アメリカ)
オムニコムグループは、ニューヨークに本社を置く、世界第2位の広告代理店です。世界100ヶ国以上で企業を展開しています。
オムニコムは専門的なコミュニケーション・サービスを提供している他、メディアバイイング、プランニングなども勿論行っています。
日本での事業展開している主な企業は以下になります。
- I&S BBDO
- DDB Japan
- TBWA HAKUHODO
- Interbrand
- ブルーカレント・ジャパン
などなど、他にも存在します。
3位:(フランス)
ピュブリシス・グループは、フランスのパリに本社を置き、世界100ヶ国以上で事業展開している世界第3位の広告代理店です。日本での事業展開は、現在ビーコンコミュケーションズがメインとなって、事業を行っています。
ビーコンは2001年、ピュブリシス傘下の企業と電通が提携し、サービスを展開しており、主にブランドコミュニケーションの業務を行っています。
コミュケーションのソリューションとして、消費者エンゲージメント、CRM、ソーシャル、コンテンツ開発、メディア、データ・ドリブン・マーケティング、UI/UXデザイン、ショッパー、体験型イベントなど、さまざまなビジネス技能を集約しているそうです。
4位:インターパブリックグループ(アメリカ)
インターパブリックグループは、ニューヨークに本拠地を置く、広告とマーケティングサービスを提供する企業です。
日本での事業展開している主な企業は以下になります。
- マッキャンエリクソン
- オクタゴン
- フューチャーブランド
外資系総合代理店のプレイヤーまとめ
広告代理店の世界ランキングパートで、グループごとのお話をさせて頂きました。そのグループには、それぞれ企業が属しているので、ブレイクダウンして企業の紹介をしようと思います。
実際に転職する際は、グループ採用ではなく、WPPグループのグループエム・ジャパン株式会社にapplyするという形です。それぞれ企業で採用を行っている為です。日系企業でもホールディングスになっている場合、各企業で採用活用を行っている形と同様です。
外資系広告代理店に転職を検討している方は、企業の特色がわかり、ご自身が行いたい業務などをイメージしながら、ご覧頂ければと思います!
WPPグループ グループエム・ジャパン株式会社
グループエム・ジャパンは、世界最大級の広告代理店WPPグループの一員で、業務としてはメディアエージェンシーで、主にメディア戦略・buyingを行っている企業になります。
グループエム・ジャパンは、ホールディングスになっており、グループとして「メディアコム」「ウェーブメーカー」「マインドシェア」「エッセンス」がエージェンシー機能を持ち、メディア戦略などを行い、クライアントのサポートを行っています。
グループエム自体は、ファイナンスやトレーディング、buyingなどを行っており、エージェンシーという機能は持ち合わせておりません。採用はグループエム・ジャパン株式会社で行う為、どこのエージェンシーに配属されるかは採用後に告知されるケースになる場合があります。
グループエム・ジャパンの案件は、国内外の大手企業がクライアントメインとなり、誰もが知っている企業のメディアプランニングが担当できることでしょう。プランニングとしては、オンライン・オフライン問わず対応することになるはずなので、総合的な知識・経験が必要になります。
本社所在地
東京都渋谷区恵比寿4丁目20番3号 恵比寿ガーデンプレイス・タワー 30階
WPPグループWunderman Thompson Tokyo合同会社
Wunderman Thompson Tokyo合同会社は、世界最大級の広告代理店WPPグループの一員で日本で最古の外資系広告代理店と言われています。
業務としては、コミュケーション戦略、エクセキューションの戦略、メディア戦略、PR戦略、クリエイティブ戦略の全境域のサポートを行っており、幅広い業務に携われることが出来ることでしょう。
また、Buying機能は保持しておりますが、現時点ではBuyingは他エージェンシーにお願いしているケースが多く、直接Wunderman Thompson Tokyo合同会社が買い付けを行うことが少ないということです。
ちなみに、TVをBuyingする機能も存在しますが、Wunderman Thompson Tokyo合同会社から購入することがほとんどない状況のようです。(デジタル広告の運用なども行っていないよう)
本社所在地
東京都渋谷区恵比寿4丁目20番3号 恵比寿ガーデンプレイス・タワー 30階
WPPグループ オグルヴィ・ジャパン合同会社
オグルヴィ・ジャパンは、世界最大級の広告代理店WPPグループの一員で、業務としては、コミュケーション戦略・メディアプランニング・PR戦略プランニング、制作も行っており、迅速に制作サービスを提供しています。
特に強みにしているのは、ブランディングをメインとするコミュケーション戦略とそれに付随する制作を行う業務となるようです。(TVCMの制作なども行うことが可能である)
本社所在地
東京都渋谷区恵比寿4丁目20番3号 恵比寿ガーデンプレイス・タワー 25階
WPPグループ 株式会社グレイワールドワイド
グレイワールドワイドは、世界最大級の広告代理店WPPグループの一員で、業務としてはブランド構築、広告企画、クリエイティブ提案・制作をメインにコミュケーション戦略のサービスを提供している企業です。
ブランドのコミュニケーション戦略を担っており、そこに付随するブランド構築、広告企画、消費者調査、クリエイティブ提案・制作も行っており、クリエイティブエージェンシーの機能も持ち合わせています。
デジタルメディアのユニークな活用方法などを提案しているケースもあるようです。
本社所在地
東京都渋谷区恵比寿1丁目23−23
オムニコムグループ I&S BBDO
I&S BBDOは、世界第2位のオムニコムグループの一員で、業務内容としては主に4つの事業に分かれています。
1.ブランディング・サービス
マーケティング戦略からクリエイティブまでのサポート
2.ストラテジックプランニング
消費者インサイト、R&D、マーケティング・コミュニケーションの情報等を提案
3.トータルメディア・サービス
メディアプランニング&バイイングシステムでメディアにおけるプランニング業務
4.多様なマーケティングサービス
プロモーション、イベント、PR、インタラクティブほかダイレクト・マーケティング&カスタマー・リレーションシップ・マネージメント・ソリューション、店舗デザインを専門子会社とともに立案・推進
余談ですが、現I&S BBDOは元々第一広告社という企業とセゾングループのSPNが対等合併し、新社名I&Sとなった経緯があります。(1986年)その後、1998年にアメリカの大手広告代理店オムニコムグループと資本提携し傘下に収まり、現社名I&S BBDOとなりました。
本社所在地
東京都中央区晴海1-8-10 晴海トリトンスクエアX
オムニコムグループ TBWA HAKUHODO
2006年に日本の総合広告代理店の博報堂とTBWAワールドワイドのジョイントベンチャーとして設立された総合広告会社です。
業務としては、コミュケーション戦略、エクセキューション、メディアプランニング、PR戦略のオーバーオールのサポートが可能であり、いわゆる総合広告代理店です。強み、コミュケーション戦略~制作が非常に強いと言われております。
クライアントとしては、「Apple」と「日産」がビッククライアントであり、この部署が中小企業くらいの規模を持ち合わせており、1つの会社くらいの組織となっているようです。
そして、TBWA HAKUHODOは博報堂の資本が60%と入っているので博報堂本社からの出向者も多く、博報堂本社の方々とお仕事をすることも多いらしいです。(資本構成:博報堂 60% / TBWA 40%)
本社所在地
東京都港区芝浦1-13-10第3東運ビル
ピュブリシス・グループ ビーコンコミュケーションズ
ビーコンコミュケーションズは、世界第3位の広告代理店ピュブリシス・グループの一員で、業務としては、コミュケーション戦略、エクセキューションの戦略、メディア戦略、PR戦略、クリエイティブ戦略などを行っており、コミュケーション戦略からクリエイティブ戦略から制作まで一括で行うことが強みのようです。TVCMなどの制作なども行うことが可能です。
またメディアの買い付けに関しては、電通とタックを組んで買い付けすることが多いようです。つまり、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、デジタルなどのメディア領域は、電通とのパートナーシップを組んでいるため、電通と一緒にクライアント様のサポートを行うケースが多いとお聞きます。
本社所在地
東京都品川区上大崎3-1-1JR東急目黒ビル
インターパブリックグループマッキャンエリクソン
マッキャンエリクソンは、世界第4位のインターパブリックグループの一員で業務としては、総合代理店になり、様々な機能を持ち合わせています。具体的にどのようなサービスを提供しているかまとめみました。
メディア
オンライン・オフライン問わずメディア戦略・買い付けを行っている
マーケティング・戦略
戦略、プランニング、クリエイティブ開発、全てのメディアに対応した統合されたプロダクション機能を持っている
PR&インフルエンス
消費者マーケティング、企業レピュテーション、ヘルスケア、テクノロジー、CSRなどを始めとするPR技術を提供
ブランディング & デザイン
デジタル、小売、ホスピタリティからプロダクトデザインまで、幅広い分野において、デジタルトランスフォメーション、リテール改革、プロダクトイノベーション等、様々な課題に取り組んでいる
など、総合代理店が持ち合わせている機能をマッキャンエリクソンはサービスとして保持しています。メディアプランニング・買い付けなどの企業とは担っているサービスが異なりますよね。外資系で総合代理店はマッキャンエリクソンが有名どころかもしれません。
本社所在地
東京都港区南青山1-1-1新青山ビル東館
外資系総合代理店へ転職するには?
外資系広告代理店へ転職する際に、優遇されるポイントを記載します。私も採用面接に参加することもあるので、この人欲しいなと思う観点で記載させて頂きます。
転職エージェンシーに要件定義している内容というより、実際に外資系広告代理店で勤務している私から来て頂きたい人材という観点です。
1.広告業界での経験がある
なんと言っても業界経験者はかなり採用に近づきやすいと思います。さらに言うと、採用ポジションがある職種と現在(前職)の職種がマッチしていると即戦力になれる為、採用されやすい傾向にあります。
例えば、メディアプランニングの職種であれば、過去にデジタル・オフラインのプランニング業務を行っていた、コミュケーション戦略であれば、過去にコミュケーション戦略を行っていたなどです。
あとは、デジタルの知見・知識がある方は優遇される場合があります。外資系広告代理店はデジタル人材が不足しているためです。
私もそうですが、新卒時代は日系企業でデジタル広告分野に経験しておりました。日系企業からなかなか外資系広告代理店に転職する人は少ない感覚で、他のデジタル専業代理店へ転職、電通・博報堂に転職するパターンが多いです。
外資系広告代理店に転職しようと思う人がそこまで多くはないと思いますので、デジタル人材は日系に転職する割合が多いので、デジタルの経験者が面接に来ると、お!となることもあります(笑)
2.自ら考えて行動する力 / コミュケーションスキル
自ら考えて行動する力
どこ企業でも言えることなので、一般的に言われていることだと思いますが、外資系広告代理店では「役職問わず」より自ら考えて行動する力が求められるような気がします。なぜなら、人数が大手日系企業と比較すると少ないので、様々な業務を任せられるためです。役割は勿論決まっていますが、柔軟性が高い方が良いですし、言われたことだけではなく、考えて行動することが必要です。
コミュケーションスキル
広告代理店はチームで稼働することがほとんどです。外資系広告代理店になるとグローバル企業を担当することが多いので、国内外問わずコミュケーションするため、「チームで連携しながら、仕事は出来そうか」という点はよく見られるかと思います。よって、面接中はこの辺りによく見られている可能性が高いです。
3.英語
外資系 = ネイティブレベルが求められると思われること方も多いでしょう。どのくらいのレベルが必要なのか・・・勿論、speaking(hearing), writing, readingすべて出来たことも越したことないです!
しかし、採用活用で英語が話せないからと絶対に落ちるという訳でもないです。勿論、ポジションにもよりますが、writing, readingがある程度出来れば採用されている方もいます。なぜwriting, readingが重要かというと、メールや資料作成、ツール関連、社内情報収集は英語のことが多いためです。よって、writing, readingスキルはある程度は重要になります。
英語は、、話せないから無理だ。と思わずにトライしてみて下さい!私も話すのは正直出来ないです、社内の人間と会話ならある程度行う機会もありますが、なんとかやっておりますという感じです・・・(笑)
外資系広告代理店と日系広告代理店の違い
多くの違いがありますが、ここでは「仕事の業務内容」と「給与」について記載します。
業務内容について
外資系広告代理店は縦割りで仕事が決まっていない場合があるので、人によっては、良し悪しはあると思います。役割が決まっていて、そこしか対応したくないという方に関しては、外資系広告代理店は不向きかもしれません。
外資系広告代理店が縦割りではないというのは、例えば、デジタルメインで業務を行っていても、オフラインのことにもチャレンジすることもあるということです。完全にスコープから外れていますよね。
私の考えですが、広告領域でも普段とは異なる領域を経験できるので良いことだと思っています。日系企業の場合、お伝えてしているように割と縦割りで業務が決まっているとよく聞きますので、スコープ以外の仕事は出来ないことが多いです。(勿論、部署が変われば行う業務が分かってくると思います)
様々なチャレンジを部署の移動なく、経験出来るという面はメリットかと思います。
給与について
給与については、人によりますので一概には言えないですが、電通・博報堂以外の日系企業よりは高い傾向にはあるかもしれません。中途である程度の役職であれば、給与が高い人は結構いると思います。
日系企業との違いは、若くしても結果を残している方に関しては、優遇されやすい傾向にあるという点です。日系企業は優秀で成績を残しても階段式にステップしていき、また上が詰まっているので、少し年功序列を感じる部分がありましたが、外資系広告代理店は多少異なります。(多少と言っているのは、少しは年功序列の風習はあるということです)
周りから見てもパフォーマンスが高い人は、大きなクライアントリーダーなどに抜擢され、役職・給与が上がり、待遇が良くなるケースを見てみたので20代-30代前半でサラリーマンの大台と言われる額をもらう人もいます。日系企業とは異なり、人によっては出世のスペースは早いかと思います。
まとめ
・広告代理店と一概に言っても、各企業担っている業務が異なる
・外資系広告代理店への転職は、広告業界での経験が最も優遇されるケースが多く、英語はwriting, readingがある程度出来れば採用されやすい
・外資系広告代理店は、仕事の縦割りが明確ではないケースもある、様々な業務を行う機会があり、給与は、平均的に電通・博報堂以外の日系企業よりは高い傾向にある場合が多い