インクリメンタルリーチとは?
「インクリメンタルリーチ」という言葉、オンライン(デジタル広告)・オフライン(TV等)のプランニング、またはオンラインのみのプランニングを行う際に、耳にする言葉だと思います。「インクリメンタルリーチ」はどのくらい取れそうでしょうか?と聞くことはないでしょうか。
「インクリメンタルリーチ」とは、純増したリーチという意味です。イメージとしては、以下の円が重なっていない部分がインクリメンタルリーチになり、例えばTVCMを軸にして、デジタルAで取れるインクリメンタルリーチは10%となります。
なぜなら、TVCMとデジタルAの重複が10%となるので、重複を省いたリーチ%は10%です。基本的に軸を決めて、重複を省いたもう片方のメディアでどれだけ「純増したリーチ」を獲得出来るのかが、インクリメンタルリーチという考え方になります。
ポイント
- 軸を決めること
- 重複を省いたもう片方のメディアがインクリメンタルリーチとなる
インクリメンタルリーチの概念はご理解頂けましたでしょうか?
インクリメンタルリーチが問われている背景
インクリメンタルリーチが問われている背景としては、現在TVCMのみではリーチがしづらい年代が出てきている為、TVCMの補完としてデジタル広告でどれだけインクリメンタルリーチを獲得出来るのか?ということが背景としてあると思っています。所謂、TVとデジタルのクロスメディアで考えたときの話です。
また「2019年日本の広告費」の記事にて、2019年にインターネット広告費がテレビメディア広告費を初めて超えたというニュースが、反響を呼んでいたかと思いますが、デジタルシフトがかなり進み、若年層などがTVを見る機会が減り、リーチがしづらくなっています。デジタルへの投資額が増えていることから、それだけデジタル広告のニーズが顕在化されているということだと考えています。
https://www.dentsu.co.jp/news/release/2020/0311-010027.html
また、インターネット広告費は、テレビメディア広告費を超え、初めて2兆円超えとなった。デジタルトランスフォーメーションがさらに進み、デジタルを起点にした既存メディアとの統合ソリューションも進化、広告業界の転換点となった。
勿論、デジタル媒体同士の重複とインクリメンタルを気にする広告主もいるかと思います。ただ、デジタルは媒体毎にフリークエンシーキャップも設定出来ますし、オーディエンスのボリュームがある程度大きければフリークエンシー過多にはなりづらいです。
私の個人の経験でも、キャンペーン全体のフリークエンシーが過多になったことはありませんでした。むしろ、キャンペーン全体で見た時に、フリークエンシーをもっと上げたいと言われたことがあるくらいです。
※キャンセル全体のトータルフリークエンシーは、DARやcampaign managerで取得しました
DARとcampaign managerとは何かは以下の記事で説明しています
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インクリメンタルリーチの分析方法
インクリメンタルリーチを分析する手法として、広告配信後の振り返り際とプランニング段階で行える3つをご説明致します。
1. 調査会社に依頼し、キャンペーンの実績で分析
調査会社に依頼する際は、シングルソースパネルを活用することが多く、キャンペーンの実績ベースで分析になります。要するに、広告出稿後の振り返りとして分析出来る内容になります。もし、この分析をする場合は調査会社と連携しながら、どのような分析を行いたいのかを事前にすり合わせ、調査設定やトラッキングタグなどを準備する必要がありますが、ここではどのような概念で調査が可能かのみご説明致します。以下の図にイメージを作成致しました。
調査方法はいくつかありますが、今回は広告接触ログデータを活用した例・概念を解説します。TV・PC・スマホでそれぞれの広告に触れたのかを調査することで、TVのみのリーチ/デジタルのみのリーチ/TV&デジタルの両方に触れたなどを把握することが出来ます。調査会社が保持しているモニター(パネル)から調査している為、同一個人どのような広告に触れたのかが分かり、そうすると「重複率」や「インクリメンタルリーチ」を分析することが可能という訳です。
TVやデジタルではログデータを保持している企業もありますが、新聞や雑誌などのその他オフラインメディアに関してはログデータではなく、「asking」になりますのでご理解下さい。ただし、シングルソースパネルには変わりはないので、同じ対象者(シングルソース)になり、同一個人として複数データを継続的に収集可能です。
2.ACR/exにて、一般調査する活用する方法
ACR/exなどを活用して、一般的な調査をすることが可能です。ACR/exの簡単な紹介は以下の記事で纏めていますので、ご参考にして下さい。
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ACR/exではキャンペーンに沿って調査を実施するという訳ではなく、全体のメディアベースになりますので、一般調査だとお考え頂ければと思います。(メディア接触状況を分析可能)
具体的にどのようなことが可能かを以下に紹介させて頂きます。
まずは分析したいターゲティングを選定します。例えば、女性18歳-44歳でメディア接触状況を調べるということです。※以下の図を例として記載しますので、具体的な媒体名は記載していないです
・媒体A(1週間の利用有無):65%
・媒体B(1週間の利用有無):35%
・媒体A & 媒体B(1週間の利用有無):19%
このような形でメディア単体のリーチ%と重複しているリーチ%を分析することが可能です。期間や設問、メディアなどはACR/exで登録しているものであれば、組み合わせが自由になります。ご自身が現在プランニングしている項目に合わせて、分析することで求めている情報が手に入るかもしれません。
3.複数のデータを活用する
3つ目は、複数のデータを活用するパターンになりますが、要するにそれぞれ異なるソース毎でリーチ%等をデータとして集めます。以下の内容でお話しますと、媒体Aと媒体Bは同一個人で取得していないということになり、それぞれ異なるデータから取得しています。それぞれのリーチを単純にデータ取得するだけなので難しくはないですよね!
・媒体A(1週間の利用有無):60%
・媒体B(1週間の利用有無):40%
問題ないは、重複率の部分になります。ご説明した1.2はシングルソースパネルを活用し、キャンペーンの実績や一般調査で重複率を把握することが出来ました。取得する方法としては、どうようのターゲティング・セグメントの実績がある場合は、過去実績を活用するか、もし過去実績もない場合は、ある法則を活用して算出することになります。あくまでも、法則に則ることになりますので、完全に正しい訳ではなく、理論的に計算する際の結果となります。
では、具体的にどのように計算するのかを解説しています。
もしクライアントからこう言われたら
テレビリーチが60%、オンラインリーチが40%のときの、重複リーチを求めてください!と言われてしまったら・・・
上記の図は、重複リーチを求める法則になります。具体的な解説は以下に記載していますので、ご覧下さい。
重複リーチの考え方
- テレビのリーチは60% (=0.6) なので、横幅のうち0.6までの部分の面積で表される
- オンラインのリーチは40%(=0.4)なので、縦幅のうち0.4までの部分の面積で表される ※テレビとオンラインは独立(=お互いに影響を与えない)ので、それぞれタテヨコ違う軸で考えるのがポイント
- 右図から、色の塗られていない空白の部分の面積は(1-0.4)(1-0.6)=0.24
- したがって、重複リーチは全体のうち色の塗られていない部分の面積以外なので、3の結果を1から引いて 1-0.24=0.76、すなわち76%となる
このような計算をしていくと理論的に重複リーチを把握することが出来、さらにインクリメンタルリーチが確認出来ます。あくまでも、法則に当てはめた場合です!
ちなみに、3つ以上の媒体の場合は、以下のように考えられます。
一般に、n種類の媒体のリーチをそれぞれr1、r2・・・rnとするとき、コンバインドリーチRnは
計算式
Rn = 1-(1-r1)(1-r2)・・・(1-rn)
以上が、複数のデータを活用し、法則に当てはめた重複リーチ & インクリメンタルリーチの算出方法でした。
まとめ
- インクリメンタルリーチとは、純増したリーチという意味
- インクリメンタルリーチという考え方の背景は、TVCMではリーチしづらくなった為と想定
- 調査会社に依頼することで、実施したキャンペーンの分析可能
- ACR/ecなどのツールを活用すると一般的な調査が可能
- 複数のデータを活用し、法則に当てはめることで分析が可能